その資産を守り引き継ごうという動きが、行政はもちろんのこと民間でも少しずつ広まりつつあります。
今回ご紹介するのはその動きの一つ、神奈川県小田原市で慶応元年から蒲鉾を作り続けている蒲鉾の老舗企業、株式会社鈴廣蒲鉾本店の地域づくり活動「なつかしい未来づくり」という活動です。
150年間近くもの間小田原という土地に根ざして商いを続け、同時に故郷への感謝の気持ちを持ち、故郷の良さを誰よりも知っている鈴廣が、「なつかしい未来づくり」というコンセプトで地域づくりを続けています。
株式会社鈴廣蒲鉾本店
老舗にあって老舗にあらず
「老舗にあって、老舗にあらず」、これは鈴廣蒲鉾の社是です。
伝統を受け継ぎながらも、絶えず時代にとともに変わり続けるという意味がこめられています。そこには古き良き日本の大切なものを守りながらも、時代にあわせて常にイノベーションを起こしていくという企業の姿勢があります。
この社是を指針として、企業活動を行なってきた鈴廣。長年の企業活動の中で育まれた地域にかける想いを、環境保全、地域の人の絆づくり、伝統文化の継承を通して未来に伝えている活動は、鈴廣蒲鉾本店の「なつかしい未来づくり」です。
小田原を拠点とし、地域づくりの活動とその想いを全国へ伝えています。
森と海に囲まれた小田原市
なつかしい未来づくりとは?
鈴廣が思い描く「なつかしい未来」は、
こどもたちが「ずっとここに住みたい」と思う夢のあるところだったり、
大人になっても「ただいま!」と言いたくなるようなところだったり、
時代とともに新しくなる一方で、どこか懐かしさを感じこころ安らぐ、そんな未来です。
鈴廣は、この「なつかしい未来」をつくるために、
1. 環境活動
2. 地域活動
3. 文化活動
の3つの活動を行なっています。
それぞれどんな活動をし、小田原という地域にかける想いを伝え、これからの日本の「なつかしい未来」を作っているのでしょうか。
環境活動~「森・里・海、つなげて」~
なつかしい未来づくりの「環境活動」の考え方は、「森・里・海、つなげて」。
自然はすべて繋がっていて、循環しているという考え方のもと、かまぼこを作るのに必要な新鮮な魚が住む海のために、海に注ぐ川や、森の中の川の水源地の保全活動を行なっています。
この、一方を相模湾に、一方を箱根山などを擁する山地に囲まれた小田原ならではの発想に基づく環境活動は、小田原だけではなく、「ローカルサミット(記事リンク)」などへの参加を通して、全国へ展開されています。
水源地の保全活動「恵水の森」
地域活動~「人と人の絆、つむいで」~
「地域活動」の考え方は、「人と人の絆、つむいで」。
かつては、人の顔が見える関係性が当たり前でした。しかし、現在、核家族化がすすみ、地域との関わりが希薄になるなど、顔のみえない人と人との絆が紡ぎにくい世の中です。
希薄になった人と人との絆を紡ぎ、人と人とが手を取り合って生きられる世の中をつくる。そんな、想いが込められています。
具体的に、鈴廣は小田原のシンボル、小田原城のお祭に協賛・参加したり、
サッカーのクラブチーム「湘南ベルマーレ」へ協賛したり。
地元の様々な活動への参加を通し、まずは出来る所から始めているようです。
小田原市「えっさほい祭り」での鈴廣社員による演舞
「文化活動」〜「和のこころ、つたえて」〜
「文化活動」の考え方は、「和のこころ、つたえて」。
鈴廣は日本の文化、地域の風土、文化をとても大切にしています。
日本ならでは、その地域だからこそ育まれた価値観、食、建物こそ、日本・地域の魅力であり、人々を引き付けるものだからです。
鈴廣は、未来に引き継ぎたい、人のこころ、食、文化、道具などを紹介する「季刊誌」の発行や、日本の国技、大相撲への協賛などを行なっています。
大相撲の呼び出しさんの着物の背中に鈴廣の文字があるのを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
もともと神に五穀豊穣を祈り、感謝し、その心を奉納する儀式と言われている大相撲。そんな大相撲に協賛することで、蒲鉾の主原料である魚などの、自然の恵みによって、商いを続けてきた鈴廣の、自然への感謝の気持ちを伝えているということです。
また伝統文化に流れる考え方を、新しい取り組みのなかに生かし、歩んでいくことも大切なことと考えている、鈴廣。「老舗にあって、老舗にあらず」という社是を掲げる鈴廣ならではの考え方です。
大相撲「呼び出し」の着物
Facebookページで情報発信
鈴廣の「なつかしい未来づくり」は、Facebookを活用しています。
まずは、鈴廣が小田原でどのように生まれ、現在まで育ってきたのか、
鈴廣が小田原という場所と運命を共にしてきたのかが、タイムライン表示を通して、わかりやすく表現されています。
小田原が面する相模湾では、新鮮な魚がたくさん捕れたこと。
江戸時代、魚を幕府まで届けるには、加工する必要があったため、そこから蒲鉾産業がうまれたこと。
そんな、小田原の、蒲鉾産業と地域性との関係もよく分かります。
また、「なつかしい未来づくり」の具体的な活動や小田原で行われる各種イベントの紹介もされています。
老舗企業の「地域にかける想い」は、
その地で生まれたところから始まり、長い歴史の中で、いかにその地と運命を共にしてきたのか、そして、現在どのような地域づくり活動をしているのか、といういわば「ストーリー」の中に息づいているもの。
ストーリーを表現するのにちょうどいい、Facebookページのタイムラインを活用して情報発信しているのです。
「なつかしい未来づくりFacebookページ」
まとめ
長年の企業活動の中で、育まれた地域にかける想いを、環境保全、地域の人の絆づくり、伝統文化の継承を通して未来に伝えている、老舗企業、鈴廣蒲鉾本店の「なつかしい未来づくり」。
小田原の蒲鉾産業には、小田原の地域性が深く関わっているように、企業活動と地域性は切っても切り離せないもの。
企業の地域づくり活動は、単なる表面的なCSR活動と言われるものではなく、企業活動そのものということが言えそうです。
比較的固いイメージのある老舗企業が、若者と繋がりやすいFacebookなどのソーシャルメディアを使い、カジュアルに情報発信をしていることも、特筆すべき点です。
【鈴廣蒲鉾本店公式ページ】
http://kamaboko.com/
【なつかしい未来づくりページ】
http://kamaboko.com/future/
【なつかしい未来づくりFacebookページ】
http://on.fb.me/TInnIf
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