国民の2人に1人が花粉症と言われる、スギの花粉症。
杉の花粉症は自然環境による健康被害的なものと思っている方も多いかと思います。
しかし、過剰なまでに杉の植林を増やしてしまったことが、多くの被害を引き起こしてしまったのです。
今回は、そんな花粉症ブームの立役者である、林野庁の活動をお伝えします。
戦中・戦後期の、大量の木材需要
太平洋戦争中、軍の建物や防空濠、船、鉄道、紙などが作るため、多くの木々が伐採され、戦後も、空襲で焼けた家の再建、燃料となる薪、炭などに使われ、山々は裸となってしまいました。裸山になってから、雪崩などの災害防止や、環境保全の目的から、林野庁を中心とした植林が始まりました。しかし、植林された木々の多くが、生長が早く、まっすぐ伸び、軟らかくて軽いため加工がしやすいスギだったのです。
さらに、1960~70年代になると、建築ブームが起き、国有林の森林は次々と姿を消し、加工しやすいスギなどが植えられました。また、民間の人が持っている民有林でも、国の計画によってスギなどが植林されました。民有林には国から多くの補助金が支給されたので、多くの山が一度にスギなどの人工林に変わってしまったのです。
スギやヒノキなど針葉樹だけの植林を戦後の森づくりの中心
林野庁の発表している最新データによると、2007年3月31日時点で国内の森林面積のうち人工林が41%を占め、そのうち18%、面積にして450万ヘクタールがスギです。ヒノキも10%にあたる260万ヘクタールにのぼります。スギやヒノキなどの針葉樹は植林から伐採のサイクルが約50年。
担い手の高齢化による人手不足と需要の低迷で「50年周期の林業」は維持が難しく、手入れが行き届かず、あちこちで森が荒廃してきました。
しかし、木材は安い値段でしかうれなくなった。
植えたはいいものの、国内の木材価格の低迷により林業従事者は採算上厳しい立場に置かれました。外国から値段の安い材木が輸入されるようになると、国産は安い値段でしか売れなくなってしまいました。木材は高値で売れず、伐採やその後の植林にもコストがかかるため、放置された挙句に花粉を増大させているスギは少なくありません。
理想の人工林へ
東京都の場合、森林面積全体のスギ・ヒノキが占める割合は40%に上るほど、スギの木が多いです。
対策として2006年からは10年間の計画で「花粉発生源対策」がされています。
間伐した後、残った木々を枝打ちして花粉発生量を抑え、花粉の少ないスギを植林を実施中で、
2012年度までに間伐した人工林の面積は5700ヘクタール、枝打ちしたのは900ヘクタール分に達したそうです。
今すぐに、スギ・ヒノキ花粉を減らすのは不可能に近く、現実的ではありません。
しかし、戦前のように針葉樹と広葉樹が混在する複層林へのシフトがいま必要です。
複層林を中心とした森が増えていけば花粉も減っていきますし、
自然に近い森なので、杉や檜の絶対数が減って大きな木が育ちやすく、中には間伐すら必要ない森になることも。
やはり、自然に近い状態が地球にとっても、人間にとっても、気持ちの良い状態なのですね。
花粉症は人災である事に関して、私達日本人への痛烈な批判を書かれている本を紹介します。
植林事業、広葉樹も仲間入り 林野庁、強い森づくりへ
http://www.asahi.com/eco/TKY200907110169.html