そこは、御徒町からほど近く、上野・御徒町の“人情味溢れる下町感”と、雑居ビルが所狭しと立ち並ぶ都心部の“殺伐とした空気”がミックスされた、ある種独特な雰囲気を作っている街。
そんな街の真ん中に、都心部では非常に珍しい、誰にでも開放された巨大なアートセンターが存在しています。
その名は「アーツ千代田3331」。
ここには現在、アートギャラリー、オフィス、カフェなどが入居し、展覧会やワークショップ、講演会、シンポジウム、料理イベント、スクールなどあらゆるジャンルのアート活動およびコミュニティ活動の舞台として街に根付いています。
しかし何故、街の真ん中にそんな巨大なアートセンターが生まれたのでしょうか。
廃校をアート活動の拠点に!「ちよだアートスクエア構想」
その場所は元々、千代田区立の中学校でした。
しかし、生徒減少などの原因から統廃合により2005年に廃校に。
丁度同じ頃、千代田区では「ちよだアートスクエア構想」を検討する有識者委員会が立ち上がり、“廃校をアート活動の拠点にする”という検討が重ねられていました。
そこで、この廃校になった中学校を利用した事業構想の公募が始まりました。
そして、2008年。
「ちよだアートスクエア構想」を実現する為の事業提案コンペが開催され、数多くの事業企画案の中から「アーツ千代田3331」の企画が採用され、5年間という契約の下にプロジェクトがスタートします。
学校と公園を一体化させたリノベーション
「アーツ千代田3331」は満を持して、2010年6月にオープン。
隣接する公園と学校を大きなテラス階段で繋ぐ事で出来た開放的なエントランス。
そして、アーティスティックな元教室や廊下、そして随所に残された黒板や下駄箱など誰もが感じる“学校の懐かしさ”が加わった、唯一無二のリノベーション空間が誕生しました。
その結果、口コミやメディアからの情報によって、たちまち、アート好きはもとより、ビジネスマンや子供連れの家族、若いカップル、地元のご老人までと、様々な方々が訪れる場所となりました。
来館者はオープン3年で170万人を突破し、現在、廃校を利用した総合的なアートセンターのモデルケースとして、現在、国内外からも高い注目を受けています。
公園と学校が繋がることで生まれる、新たな“コミュニティ”
「公園と学校が繋がる」
公共空間と民間管理空間が繋がりによって、新たなコミュニティが生まれるのが、「アーツ千代田3331」の大きな特徴です。
ここでは、公園と1階のカフェ、フリースペースが空間的に繋がって一体となっています。
カフェではビジネスマンやアーティストがミーティングや読書をし、公園では盆踊りなどの住民たちの地域行事が行われます。
学校と公園が一体となったことで、ビジネスマンやアーティストが地域行事に参加し、地域住民はフリースペースを活用するなど、ビジネスマンやアーティストと地域住民たちの新たな交流が生まれました。
この一体となった空間が、人々の繋がりを強化して、新たなコミュニティを形成する役割を果たしています。
今後も少子化の影響から、全国には廃校などによって一時的に不要になる大きな空間がますます増えていきます。
この例を見ない「アーツ千代田3331」のリノベーションによって生まれた空間と、そのコミュニティの作られ方。
大きな空間が「アーツ千代田3331」にように上手く再利用されていくと、街、地域の活性化の一助になることは間違いないでしょう。