カフェにけん玉?!長屋リノベーション「muu muu coffee/サテライトキッチン」(曳舟/小村井駅)

あたたかい談笑の中、おいしい一杯でほっと一息をつく・・・
友達に会いに来たかのようなアットホームさに、そこがカフェだということを忘れてしまいそう。そんなお店は、素敵ではありませんか?

東京のランドマーク、スカイツリーへもすぐ近くのこの場所は、東京都墨田区の中央部に位置する京島。昔ながらの下町風景が広がる、人と人との距離が近く感じられる街です。

そんな街の魅力と見事に共生しているカフェが、ここにはあります。

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京島に残る昭和レトロな面影、そして下町人情を大切に受け継ぐ一端を担っているのが、「下町人情キラキラ橘商店街」。
そのすぐそばに、商店街の一部のようにお店を構えるのは「muu muu coffee/サテライトキッチン」です。

小さな空間に広がる、オープンな雰囲気

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コーヒースタンドの「muu muu coffee」と、カフェスタンドの「サテライトキッチン」が、一つ屋根の下にお店を営む、独特のスタイルのこの一軒。
京成曳舟駅からは徒歩で約10分、東武亀戸線の通る小村井駅からは約5分。京成曳舟駅から歩くと、道中、哀愁を漂わせるレトロな風景の中を通りすぎます。

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たどり着いた「下町人情キラキラ商店街」は、大震災や空襲の火災を免れた、昔ながらの長屋などが今も残る地域にあります。商店街から一本入った路地に立っている「muu muu coffee/サテライトキッチン」も、古くから残る長屋を、オーナーさん方が自らリノベーションして今の姿になっています。

扉は閉まっていて、中の様子があまりうかがえません。お店の前で少し足踏みしてしまいましたが、その扉の向こうには、このお店しか持ち得ない、魅力的な空間が待っていたのです。

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店内へ入ると、まずはその小ささにビックリします。パッと見、8畳間ほどの広さしかありません。いや、8畳あるかどうか。自然に店員さんと目が合いました。明るく挨拶をかけて、空いている椅子に案内して下さいます。しかし、その間にも気になっていたのは、目の前の、少し変わった光景。お店に居るすべての人が、同じ会話に参加しています。

実はこれが、このカフェの特徴。お互いに名前も知っているような、常連さんで賑うことも多いですが、お客さんは、地元の人、遠方から訪れる人、初めて来る人、若い人、お年寄り、と様々です。

一見バラバラの、初対面の人間が自然と会話をしている。そんな不思議が可能になっているのは、驚くほどのオープンさが理由。このお店が持つ、大きな魅力のひとつです。

けん玉カフェ?

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この日は「muu muu coffee」のオーナー、灰山さんが出掛けており、いらっしゃいませんでしたが、「サテライトキッチン」を経営する、小畑さんがいろいろなお話を聞かせて下さいました。

来春、2016年の4月1日で3周年を迎えるというお店。
4月1日というオープン日は、その日に間に合わなかったとしても、「嘘でした」(エイプリルフールなので)と言えるから、だとか。お茶目な一面がうかがえます。

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お店には、こだわりを感じる陶器や、レトロな雑貨など、色とりどりの物が飾られていますが、その大部分を占めているのは、あの「けん玉」。
ぐるりと見回すと、壁沿いにも、カウンターの足元にも、なんと、天井にも。どの方向を向いても、どこかしらに、けん玉が列をなしています。

なぜこんなにけん玉があるのでしょう。
元々、オセロや人狼などのゲームが置いてあり、「みんなで遊べる」ような雰囲気が、店内にはあったそうです。そこに、仲良しのお客さんが、ハマり始めていたけん玉を、お店に置き忘れていったのが事の発端だったとか。そのご本人、訪問中に居合わせたのですが、この時も、お店の外でけん玉をしていました。現在はさらなる熱中ぶりだそうです。

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そんな偶然をきっかけに、「muu muu coffee」の灰山さんがさらにハマってしまいます。その後、けん玉を手に入れたいお客さんのために、買い付けも引き受けることに。ここからお店には、けん玉の輪が広がっていきます。
数が揃い始めた頃、今度は「もっと色んな面白いけん玉を買ってみよう」と思い、国内外から買い集めるように。現在は様々なけん玉がお店に並び、ほとんどが売られています。

そうして店内を賑やかにしたけん玉が、お店やお客さんの間のコミュニケーションツールのようになっていった、という成り行きだったのです。「まるでけん玉カフェだ」という笑い声が響き渡る店内。「老若男女、上手い下手を問わずに遊ぶことが出来る。でも、このお店に来たからといって、けん玉で遊ばなければいけないという押し付けはない。その雰囲気が良いところ。」と話すのは、仲良しのお客さん。

そうしたお話を伺っている間にも、子連れの常連さん、近所に住む若い方、さまざまな人が出入りします。そのたびに飛び交う明るい声は、お店が愛されていることを物語っています。

お客さん思いの、やさしいメニュー

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魅力的なのは、お店の持つ雰囲気だけではありません。
「muu muu coffee」が提供するのは、ていねいに淹れられるハンドドリップコーヒーや、ラテやカプチーノなどのエスプレッソ系ドリンク。エスプレッソ豆には、有名なONIBUS COFFEEのものを使用しています。500円前後のお値段です。

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カフェオレ(550円)は、牛乳か豆乳を選ぶことが出来ます(豆乳は+50円)。どちらのミルクを選ぶか、日によって変えるのも良いですね。嬉しい選択肢です。

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カフェオレ(牛乳をチョイス)と、一緒に、かぼちゃとレーズンのスコーン(250円)を頂きました。素朴な甘みでしっとりとしたスコーンは、「サテライトキッチン」のメニュー。
パスタやリゾット(850円前後)、自家製ピクルス付きのキッシュ(420円)などがベースのフードメニューは、日によって変わるので、行ってみてからのお楽しみですね。
テイクアウトOKのスコーンとマフィンは、卵や牛乳などの動物性食品を一切使用していません。脂質や古塩(動物性食品に含まれる塩分のこと)の摂りすぎを控えることが出来、体が喜ぶやさしさです。

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「サテライトキッチン」の小畑さんは、ハーブの達人。シングル(ブレンド無しの、一種類のハーブ単品のもの)で用意された種類豊富なハーブティーを、好みに合わせて、その場でブレンドしてくれます。500円前後のハーブティーの他に、自家製ハーブシロップを使用した、サワードリンクもあります。

お店と街とむすぶ「下町人情」のぬくもり

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お店の場所をここに決めるまで、この街をよく知らなかったという小畑さん。どんな所なのかよく分かっていなかったけど、この土地の下町感に触れ、惹かれた、とのことです。
「こんな場所だとは知らずに来たけど、来てみたらすごくしっくりきた。」と話す通り、なんだか、街と店内までがひと続きのように思えるくらい、ピッタリの雰囲気です。

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似たお店が、近い距離内に点在するこの地域。普通だったらライバル視しそうですが、そうではなく、むしろ、互いに寄り添う姿勢がここにはあるのだそうです。
「みんな仲良くって感じで。」小畑さんのお話からも、街やお店への思い入れが感じられます。

狭い店内では、自然に、全員が相席のような状況に。誰かが来店するたびに、店内では、あたたかな言葉や表情が交わされます。それぞれの来店が、その場に意味を持ち、歓迎されているようです。それは、人と人との距離が近い、この小さな空間だからこそ。

気が付けば、先に居た人、後から来た人、いっしょになって、笑いを交えて会話をしていました。まさに、カフェだということを忘れてしまいそうな場所。人に会うために来たくなるような場所。下町のぬくもりが宿ったお店は、いつでもあたたかく迎えてくれます。

元薬局をリノベーションした古民家カフェ「こぐま」(曳舟)

東京スカイツリーのお膝元にある曳舟駅。東京スカイツリーを背に約5分歩くと、狭い路地にある鳩の街通り商店街が見えてきます。この商店街の周辺は東京大空襲を逃れたため、昭和初期の木造建築が残されています。

通りには、伝統のある店だけでなく、リノベーションした店も並び、懐かしさと新しさが感じられる雰囲気が漂っていました。

【リノベ・古民家カフェ No.95】「こぐま」(曳舟)
保育園を過ぎたあたりで、一際レトロ感の漂う建物が見えてきました。ここが今回ご紹介する、昭和レトロな商店街にたたずむ古民家カフェ「こぐま」です。

「こぐま」(曳舟駅)
圧倒的な存在感。外観は人の手が加わっていない独特の古さが残っていて、威厳すら感じます。それをほどよく和らげているのがお店の看板。「こぐま」という白い字とシルエットがかわいらしいです。

懐かしさとぬくもりを感じる空間と、お二人様限定の特等席

お店の中に入ると雰囲気は一変。古い洋楽のBGMが流れ、優しい明かりに包まれた心落ち着く空間が広がっています。

年期の入った学習机と椅子がなんとも懐かしい。
これらは、学習塾を営んでいた、店主の旦那さんのご実家から譲り受けたものだそうです。使い込んでできた自然な擦れがカフェの雰囲気とマッチしています。

【リノベ・古民家カフェ No.95】「こぐま」(曳舟)
店内は14席あり、隣の席と近すぎずほどよい距離です。入り口に近い席は仕切りのないオープンな席ですが、店の一番奥には間仕切りと本棚で囲まれたステキな特等席が。

【リノベ・古民家カフェ No.95】「こぐま」(曳舟)
後ろの本棚に並ぶ本の種類は、小説、エッセイ、漫画、生き物図鑑などかなり幅広いラインナップ。一人の読書タイムを堪能することもできる贅沢な席ですね。

“元薬局”を活かしたインテリア

ご夫婦で営んでいる「こぐま」は、築88年の元薬局をリノベーションした古民家カフェで、店内の至るところに薬局の名残が感じられます。

【リノベ・古民家カフェ No.95】「こぐま」(曳舟)
こちらの本棚は、もともと薬局に備え付けられていた薬品棚だったそう。棚の引き出しからは、当時の薬がたくさん出てきたそうで、中には現存しないメーカーの薬もありました。

オリジナルのカフェメニューとこだわりの陶器

ドリンクメニューは30種と、かなり充実しています。キンモクセイ茶やあずきラテ、りんご牛乳などのめずらしいドリンクや、サイダー工場とコラボして誕生した、こぐまサイダーもあります。

「こぐま」(曳舟駅)
自家製ケーキのメニューは季節ごとに変わるそう。ショコラとコーヒーのタルト、あんみつ玉など、魅力的な創作スイーツはどれも気になります。

悩んだ結果、この日はオリジナルのこぐま珈琲と、キャラメルチャイのシフォンケーキをいただきました。コーヒーはほろ苦くさっぱりしており、とても飲みやすいです。シフォンケーキはふわふわな食感で、キャラメルとシナモンの香りが口いっぱいに広がりました。

「こぐま」(曳舟駅)
カップとソーサーにも“こぐま”が。こちらは、店主の旦那さんがデザインしたオリジナルです。かわいらしくて、心がほっこりします。

この地にカフェを開いた意外な理由

ご夫婦が向島に住んだきっかけは、カフェを開くためではなく、“演劇づくり”のため。もともと劇団で演劇活動をされていて、向島を舞台にした作品を作るために移住したそう。

ただ住むのではなく、人の集まるオープンな場にしたいと思い、カフェを開いたそう。ご夫婦は「カフェを営むうちに、演劇より楽しくなってきたんです」と話してくださいました。

「こぐま」(曳舟駅)
伺った日は、ご近所に住む3人の方がお茶をしに来ていました。店主の旦那さんとの世間話はとても楽しそう。みなさんの気さくな人柄も手伝って、いつの間にか私も話に加わっていました。初めてお会いする方ともすぐに打ち解ける雰囲気が「こぐま」にはあります。ご夫婦の「オープンな場にしたい」という想いは、今でも大切にされているのを強く感じたひとときでした。

「こぐま」(曳舟駅)
「こぐま」(曳舟駅)
情緒あふれる鳩の街通り商店街を散策して、こぐまで休憩するのがおすすめコース。一人の贅沢な時間を過ごしたいとき、誰かとたわいのない話をしたいとき、こぐまでのんびりした時間を過ごしてはいかがでしょうか。

Text by Kanami Niiyama