駅すぐ近くの商店街にたたずむ癒いの場
駅の改札を出ると、目の前には足湯。ズボンの裾をまくりあげた子どもや若いカップル、お年寄りの笑顔が飛び込んできます。
そう、ここは熱海。日本を代表とする温泉街です。
駅すぐ近くにある仲見世商店街と平和通り商店街は、連休ともなると食事やお土産を求める観光客でにぎわいます。仲見世商店街を入ってすぐ、周りのお店に溶け込むようにたたずむのが「KICHI+」です。
日差しが優しく差し込む店内へ入ると、白壁と木の家具が配置されたナチュラルな雰囲気が広がっています。
訪れた日は月曜日のちょうどお昼時。店内はほぼ満席で、小さいお子さんを連れたご家族やお友達同士が、お食事をいただきながら、おしゃべりに花を咲かせていました。
どこか懐かしさを感じる空間と、地元の旬食材で心と体が元気になるお食事
店員さんに「2階の席でお好きな席へ…」と案内され、階段を上ると1階とはまったく違った雰囲気の部屋が現れます。
KICHI+は築60年以上の果物屋をリノベーションして作られました。1階は仕切りのない解放感あふれる空間。一方、2階は柱や壁、ふすまで仕切られたいくつかの部屋があります。ここが果物屋だったころ、2階にはお店の人が生活していたのかもしれません。
手前のギャラリーを抜けると木の家具が配置されたおこもり感のある空間が広がります。
2階は4人掛けが4卓、2人掛けが1卓と計18席ほどで、広々と贅沢な空間。テーブルやイスは席によってデザインが異なり、どこに座ろうか迷ってしまいます。
実は、こちらの家具はイギリスのアンティークを扱うKENT ANTIQUESのもの。「修理することを考えて修理する=循環」をコンセプトかかげるKENT ANTIQUESは、多くの家具職人が定住する静岡を拠点に、家具を修理・販売しています。
KICHI+は、木のフローリングに改装された和室とアンティーク家具が調和し、懐かしさの中にも洗練された上品な雰囲気。いつまでもいたくなるような居心地の良さです。
また、地産池消のフードメニューも大きな魅力。
食材のほとんどが熱海や伊豆の地元産。夏の献立には「薬膳」という言葉はないものの、熱を発散させ、熱バテ防止に効果がある旬食材が多く取り入れられています。
食材のうまみがしっかり感じられるやさしい味で、ゆっくり噛みしめながらいただきたくなります。
デザートもすべてお店の手作り。
写真はヨーグルトムースレモンカード入りで、甘酸っぱいレモンの薄切りが中に入っています。まったり濃厚なムースとレモンの甘酸っぱさが絶妙なバランス!
ドリンクは、ソフトドリンク500円~、コーヒー450円~、ビール550円~。
お食事は、丼もの1000円~、ランチ1100円、桜エビとしらすピザトースト650円、デザート250円~など。
ほっとできる空間と、静岡産の旬食材ごはんで、身も心も元気になれるお食事&休憩処です。
熱海にカフェを作ったオーナーの想い
「熱海になぜ、カフェを作ろうと思ったのですか?」オーナーに尋ねると、こんな回答が返ってきました。
「熱海には純喫茶は多くあったけど、カフェがなかったんです。熱海には若い人も多くやってくるけど、マクドナルドなどに集まっていて…。だから若い人が楽しめる場所を作りたかったんです。」
今や、若い人だけではなく幅広い世代が憩う、KICHI+。
体を気遣った料理、リノベーションして生まれたお店、長く使われているアンティーク家具。人とものを大切に想っているオーナーやスタッフが、この居心地の良さを生み出しているのでしょう。
ほっと一息つきながらも静岡らしさと人のぬくもりを感じられるKICHI+で、身も心もエネルギーを満タンにして、旅の続きを楽しんではいかがでしょうか。
Text By Kanami Niiyama